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* * * *  おばあちゃんの家に呼ばれたのは、卒業式の翌日だった。お祝いのプレゼントがあるから取りに来てと言われたのだ。  いつものように玄関の扉を開ける。 「おばあちゃ〜ん? 美衣子だよ〜」  しかし返事はない。不思議に思いながら居間に向かおうとした時だった。廊下に誰かがいることに気付く。 「優樹さん……?」  彼は廊下にあぐらをかいたまま、笑顔を向けた。 「どうしてここにいるの?」  会えたことが嬉しくて、優樹さんに駆け寄った。触れたい衝動を抑えながら、隣りに正座する。  彼はポケットから取り出した小さなピンクの小袋を私に渡す。 「卒業おめでとう」  この小袋って……受け取った瞬間、あの出会いを思い出した。ハッと顔を上げれば、彼が優しく微笑んでいる。 「今度は絆創膏じゃないよ」 「……気付いてたの?」 「ということは、みーちゃんは知ってたんだ?」  すると優樹さんは困ったように笑った。 「この間友達の家に行ってさ、あの時の話になったんだ。で、名前を聞いたら……」  思わず涙が溢れた。記憶の片隅にでも残っていたことがこんなにも嬉しい。 「……これ、開けてもいい?」  優樹さんが頷いたから、私は包みをそっと開ける。中には猫のネックレスとチョコチップクッキーが入っていた。 「……俺はみーちゃんより七才も年上だし、一緒にいて面白くないかもしれない。でももしそれでもいいって言ってくれるなら……」  優樹さんは照れたように頭を掻きながら微笑む。 「そろそろ友達を卒業してみる?」  思わず耳を疑った。これって現実? きっと無理だろうって思っていた私に、最大のサプライズが起こった。 「……する。優樹さんの彼女にして欲しいです……」  その瞬間、私の唇にキスが降ってきた。まるで時が止まったみたいに、息をするのを忘れてしまった。 「ばあちゃんがきっかけっていうのが複雑だけど、みーちゃんと再会出来て良かった」  彼に抱きしめられ、私は緊張しながらも幸せを感じている。あぁ、おばあちゃんが言っていたお祝いのプレゼントってこれだったのね。 「優樹さん、大好き」  恋しい人の心を私に届けてくれたんだ。  
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