69人が本棚に入れています
本棚に追加
1
高校生になり、私の生活に変化が起こる。シングルマザーとして育ててくれた母が結婚することになったのだ。
私を妊娠した時に、交際していた人に別れを告げられた。それでも母は産むことを決断し、それからは二人で生きてきた。
母が幸せになるのは嬉しい。だから結婚も賛成した。だけどいざ自分のこととなると、感情を保つのが難しくなる。
今までは私だけの母だった。でも今は新しい父と弟にもその目が向けられる。むしろ新しい家族を優先しているように感じてしまった。
そして馴染めずにいる私に気を遣う家族。だから私も無理して笑顔を作って、自然に振る舞おうとした……でも簡単にはいかなかった。
どうやっても不自然になるし、居心地の悪さから自室に篭ってしまうことも多々あった。予備校の帰りに、わざとゆっくり家に戻る日もあった。
元々高校を卒業したら、専門学校か短大に行こうと思っていた。それがいきなり大学を勧められたら、今度は勉強が辛くなった。
大学に行けること、勉強を続けられることは贅沢なこと。でもやりたいことはそれじゃない気がする。
そんな時だった。コンビニの前で座り込んでいたら、一人の女性に声をかけられたのだ。
「どうしたの? 具合でも悪いの?」
顔を上げると、優しそうな女性が立っていた。年は祖母と同じくらいだろうか。その人は私の頬に伝う涙を見て、驚いたようにポケットティッシュを差し出した。
「あら、あなたってうちのミーちゃんみたいな髪の毛ねぇ」
「ミーちゃん……?」
「うちの猫なの。かわいいのよ〜。あっ、そうだ。今ちょうど肉じゃが作ったの。良かったら食べに来ない?」
笑顔が優しい人だった。だから私もついて行ってしまったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!