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* * * *    なんだか背中がちょっと硬い……布団もいつもと違う? でも部屋は暖かい……。  うっすらと目を開けた私の目には、見覚えのない景色が広がっていた。  テレビに黒いローテーブル……? ここってどこ? それから徐々に昨夜の記憶が蘇る。ということはまさか……! 「にゃっ!」  思わず叫んで飛び上がると、部屋の奥でもう一つ飛び起きる影が見えた。 「だ、誰⁈」  私は布団で顔を隠した。優樹さんはベッドの上であぐらをかくと、壁に寄りかかる。 「昨日の夜、君が俺の部屋の前で寝てたんだ。あのままじゃ凍え死んじゃうかと思って、とりあえず部屋に入れちゃった。警察を呼ぶか悩んだけどね」 「け、警察はダメ!」  そんなことをしたら親にバレちゃう。 「大丈夫。呼ぶつもりはないよ。でもなんであんなところで寝てたの? 部屋を間違えたなら、相手の人が心配してない?」  そうか。優樹さんは私を覚えていないんだ。そしてはっとして計画を思い出す。とにかくこの場をやり過ごすためにも、ミーちゃんになりきるしかない。 「……わ、私はあなたに会いに来たんです!」 「俺? でも俺、君のことなんか知らないよ」 「そ、そんなことないです! 私を見て何か思い出しませんか⁈ ほらっ、この毛並み! 可愛い耳!」 「耳って言うけど、それお団子でしょ? 毛並みだって染めてるだけだよね?」 「ち、ち、違っ……!」 「まさかさ、ばあちゃんの猫とか言わないよね?」  まさかその言葉が返ってくるなんて思わなかったから、嬉しくて声が上ずる。 「大正解です! どこをどう見ても猫のミーちゃんでしょう!」 「……じゃあわかった。君がミーちゃんだとして、一体何をしに来たの?」 「あの……おばあちゃんに会いに行ってあげてください。おばあちゃん、もうずっとあなたに会えなくて寂しがってるの……」 「ばあちゃんが俺に会いたいって言ったの?」 「……『また遊びに来ないかしら』って……」 「ふーん……。で、もう一度聞くけど、君は一体誰なの?」  やっぱり騙せていなかった。私はあたふたしながらベッドから立ち上がると飛び降りた。 「何度も言うけど、私は猫のみーちゃんなの! おばあちゃんの気持ちは伝えたからね! ちゃんと会いに行ってよね!」 「えっ……ちょ、ちょっと……!」  それから玄関までダッシュし、急いで部屋から飛び出した。
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