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「ねぇ、名前を聞いてもいい?」
「……猫田美衣子です」
「えっ……猫田美衣子ちゃん……? だから"猫のみーちゃん"?」
「……ミーちゃんと同じ名前だって、おばあちゃんも喜んでくれて……」
「じゃあみーちゃん、質問なんだけどさ、昨日はなんでうちに来たの?」
優樹さんが突然"みーちゃん"と呼んだものだから、恥ずかしくて、熱くなった顔を両手で包み込む。
「バカみたいって思われるかもしれないけど、おばあちゃんが見せてくれた写真に……優樹さんが写ってて、カッコいいって思ったの……。それから優樹さんのお話をいっぱい聞いて……その……勝手に気になっちゃって……」
「俺に会おうとしたの?」
私はコクリと頷く。
「おばあちゃん、優樹さんに会いたいって言ってたし……それに……」
「それに?」
「……受験が近くて不安になって……家にいても窮屈だし、最近何のために勉強してるのかわからなくて……誰かに頼りたくなっちゃった……」
「でも俺なんか、会ったこともないような他人だよ? 会ったって軽くあしらわれるかもとか思わなかった?」
「……おばあちゃんの話を聞いていたら、絶対にそんなことはしないって思った」
「そんな安易な……」
「でも優樹さんは、寝ている私を放っておかずに、部屋に入れてくれたじゃない。手も出さなかったし、布団もかけてくれた」
そう、あなたはあの頃と何も変わらない。やっぱり優しい人だった。
「優樹さん、思った通りの人だったよ。だからもっと……好きって思ったの」
私の口からは自然と"好き"の二文字が飛び出したのだ。
言ってしまった……でも不安になった私に、優樹さんはこう言ったの。
「まずはお友達でいいんでしょ? みーちゃんしか見えなくなるくらい、俺をメロメロにさせてよ」
私、まだフラれてないの? まだ可能性があると思っていいの? それともただ気を遣っただけ?
どちらにしろ、まだ私は頑張っていいということだよね。あなたのそばにいていい理由が出来たことが嬉しかった。
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