我が母の初めての告白

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「皆さん、本日は忙しいのにありがとう。おかげさまで、茂樹さんの三回忌を無事終えることができました。この機会に、今まで誰にも話したことのない、あの人との結婚のいきさつをお話しするわ」  今日は父白石茂樹の三回忌だ。読経も終わり、部屋を変えて会食となったが、母の睦代がその前に挨拶したいと言った。  母は笑みを浮かべて、話し始めた。 「私が大学三年生のときに、ゼミで茂樹さんと知り合ったの。四年生のあの人は私たちにやさしく教えてくれて、女子に人気があったのよ」 「あんなに無骨なのに、姉さんたち女子大生の前ではいいかっこしてたのね」  母の妹である叔母の白石静代が軽口をたたいた。未婚の叔母は遠慮がない。 「そうなの。やがて、私と付き合うようになったのよ。でも、就職すると、あの人は仕事に追われて、デートのキャンセルが続き、付き合いは自然消滅したの」  母は瞳を輝かせ、大学生に戻っているかのようだった。 「ところが、私が就職した、翌年の五月に、茂樹さんから連絡があったの。『やっぱり君のことが忘れられない。もう一度つきあってくれないか』って」  父の弟である叔父の草尾直樹が声をかけた。
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