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「『妹がまだ高校生で、母一人では暮らしが苦しいのです』と言うと、『僕が援助します』と答えるの。『私は仕事を辞めたくありません』と言うと、『辞めなくて構いません』と答えるの。『私、仕事と家事や育児との両立に自信がありません』と言うと、『僕も家事や育児をします』と答えるの。もう、断る理由がなくなってしまったのよ」
俺が「じゃあ、母さん、そこでプロポーズを受け入れたの?」と聞いた。
母は右手を左右に振った。
「とんでもない。『それでも、だめなものはだめです』と断ったのよ」
妹が口をはさんだ。
「そう言われて、お父さん、どうしたの?」
母は全員の顔を見渡して、悪戯をした子どものように笑った。
「それがね、あの人ったら『君と結婚できないなら、生きている意味がない。一体、本当の障害は何ですか』とあきらめないのよ。私、仕方がないから、本当のことを言おうと思ったの」
その言葉が一斉にすべての視線を集めた。
「私が『絶対に笑わないと約束してくれる?』と聞いたら、あの人は『約束します』と即答してくれた。だから、思い切って言ったの」
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