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処女である自分には、普通がどうなのかもわからないし、確かめようもない。
でもこれだけははっきりしている。
尊にとっては、昨夜のあれこれは特別でも何でもなかったに違いない。
きっと、たくさんいるのであろう、女性とは、もっと凄いことをしているんだろう。
それがなんとも恨めしい。
また、そう思ってしまっただけで、胸がギュギュッと締め付けられる。痛くて痛くてどうしようもない。
美桜はこれ以上ないというほどの羞恥に見舞われつつも盛大にむくれていた。
そこに尊から、やはりどこか愉しげな呟き声が聞こえてくる。
「今からそんなことで大丈夫なのか?」
きっと、こんなことぐらいでいちいち恥ずかしがったりしていては、身が持たないし。尊のたくさんいるであろう遊びの女の一員になるには、不相応だとでも言いたいのだろう。
そんなこと、改めて言われなくともよくわかっている。なのに、尊本人に言われてしまうと、面白くない。
自分から傍に置いて欲しいと願っておいて、こんなふうに思うなんて。自分勝手なことだと自分でも思う。
けれど自分では感情のコントロールができないのだからしょうがない。
抑えの効かない感情を持て余し、半ば開き直った心持ちになってしまっている美桜は、ますます腹立たしい気持ちになってしまう。
羞恥と腹の底からふつふつと湧きたつ腹立たしさで、なおも真っ赤になって頬をぷっくりと膨らませていた。
そんな美桜の頬を背後から指先でツンツン突きながら尊はとんでもないことを言い放つ。
「俺の嫁になったら、そんなんじゃ身がもたないぞ」
「ーーッ!?」
驚愕しきりの美桜は、二の句を告げなかったどころか、思考もなにもかもを最新式の高性能冷蔵庫にも勝る速さで、瞬時に凍結させてしまっていた。
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