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説明も聞き終え、ほどなくして、都内でも有数な閑静な高級住宅街のなかでも、重厚な門構えの、あたかも要塞のような外壁により護られた豪華な日本家屋が目を引く、豪邸の広大な敷地内で車は停車した。
内外には、物凄い数の監視カメラや、護衛と思しき厳つい顔の屈強な男らが至るころに配備されており、物々しい雰囲気が漂っていた。
さすがは、日本最大の極道組織・極心会の本拠地である。
尊に促され降車した美桜の眼前には、ズラリと並んだ構成員らが一斉に頭を垂れて出迎えてくれている光景が広がっており、終始圧倒されっぱなしだった。
皆、尊に向けて、口々に「ご苦労様でございます! 若頭!」威勢のいい野太い声で労いの声をかけていて。
ーーああ、この人は本当に、この人たちの上に立つ、若頭なんだなぁ。
今さらながらに美桜は実感したのだった。
その後、玄関のエントランスで待ち受けていたヤスに案内されて、極心会の本拠地であり、会長・鬼頭櫂の自宅でもある、豪華な日本家屋のこれまたご立派な大広間へと脚を進めた。
そして現在、美桜は尊と隣り合って、櫂と初めてのご対面を果たしているところである。
日本最大の極道組織のトップということで、一体どんな人物なのだろうかと、正直生きた心地がしなかった。
櫂の登場を待っている間、緊張感がピークに達していたせいで、両親との相対中にもそうしてくれていたように、隣の尊がさりげなく手を握り気遣ってくれてはいても、気が休まることなどなかったほどだ。
そこについ今しがた姿を現し、尊に紹介され挨拶した楚々とした美桜の姿を一瞥した櫂は、至極感心したように大きな声を放った。
「ほ~。こりゃまた驚いた。女にも金にも執着せず、生涯独身貴族を貫くとばかり思っていた尊が。いきなり結婚するなんて言い出すと思ったら……。こんな若くて綺麗で、清純そうなお嬢さんをお連れするとはなぁ。近々、大きな地震でも起こるんじゃねーか。いやぁ、たまげたたまげた」
その豪胆な口調とは裏腹に、見た目は、尊ほどではないにしても。
若い頃は、さぞかし女性におモテになっていたんだろうなと、思わせるほどの、渋みのある少しワイルドなイケオジ。もうすぐ齢五十六になるのだという、素敵な男性だった。
タイプこそ違うが、尊の父親だと言って紹介されても信じそうなほどの、優れた容姿の持ち主だ。
見目麗しい尊といい、櫂といい、極道のトップになるには、容姿にも優れていないとなれないのだろうかと、美桜が感心してしまうほどである。
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