初恋の宝物

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 ある日の放課後、私は彼を屋上に呼び出した。メッセの交換もしていないので、昔ながらの方法で告げるしかなかった。  だからこそ、ちゃんと伝えられると思った。  久しぶりに顔を合わせた彼は、少し背が伸びていた。どことなく、顔付きも大人びた気がする。  私のことを覚えていてくれたことが、たまらなく嬉しかった。もうそれだけで満たされた気がした。  震える胸を押さえつけて、私は告げる。  初めて抱いた、この恋心を。  沈黙が、この場を支配する。  顔を上げるのが、怖くて仕方なかった。高校受験の結果を見る時よりも、ずっとずっと恐ろしかった。 「…………あの」  彼の声がした。声がしたからには、顔を見ないといけない。  私は唇を噛みしめ、おそるおそる顔を上げた。 「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」  頬を赤らめ、視線を泳がせている。初めて見る顔だった。 「――――あはは!!」  突然、笑い出した私を前に、彼が「えっ!?」と目を瞬かせる。 「な、何で笑ってんの?」 「いやだってさ、それ、プロポーズを受けた人の台詞じゃん」 「え……あ、そうかも」  笑いが止まらなかった。彼の言葉が滑稽だったからではない。  ずっと胸に押し込めていたものが、ドバッと一気に溢れ出したのだ。大声で笑いでもしないと、平静を保っていられなかった。  全てが報われた。言い様のない解放感と喜びが、体中を駆け巡った。  目の奥から滲んでくる涙を誤魔化すのに、私は必死だった。  実った想いを噛みしめつつ、その先の未来にも心を躍らせる。  次の初めては、どんな宝物になるのかな。
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