初恋の宝物

1/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 初めて、誰かを好きになった。  隣の席の、ごく普通の男の子だった。クラスの中心でもなければ、孤立しているわけでもない、その他大勢の一人でしかなかった。  きっかけは、何てことない。  たまたま同じ小説が好きだと知り、その小説の話で盛り上がっただけだ。  彼に淡い想いを抱いていることには、すぐに気が付いた。この想いを単なる友情だと思い込むほど、無知でも鈍感でもない。  恋なんてしないと思っていたから、最初は信じられなかった。私が知っている恋愛は、みんな『飾り』としての価値を求めるものでしかなかったから。  恋や愛なんてまやかしだとまでは言わないけど、それを現実のものだとはとても思えなかった。  だから、この気持ちを大切にしたい。  この想いを、そっと心の宝箱に仕舞っておきたい。  それなのに、今すぐ吐き出したくて仕方がない。そのくせ吐き出すことが怖くて、今日も私はこの想いをひた隠しにする。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!