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初めて、誰かを好きになった。
隣の席の、ごく普通の男の子だった。クラスの中心でもなければ、孤立しているわけでもない、その他大勢の一人でしかなかった。
きっかけは、何てことない。
たまたま同じ小説が好きだと知り、その小説の話で盛り上がっただけだ。
彼に淡い想いを抱いていることには、すぐに気が付いた。この想いを単なる友情だと思い込むほど、無知でも鈍感でもない。
恋なんてしないと思っていたから、最初は信じられなかった。私が知っている恋愛は、みんな『飾り』としての価値を求めるものでしかなかったから。
恋や愛なんてまやかしだとまでは言わないけど、それを現実のものだとはとても思えなかった。
だから、この気持ちを大切にしたい。
この想いを、そっと心の宝箱に仕舞っておきたい。
それなのに、今すぐ吐き出したくて仕方がない。そのくせ吐き出すことが怖くて、今日も私はこの想いをひた隠しにする。
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