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第1章
およそ2年ほど続いた点滴治療の結果、酷使したオレの腕や手の甲の血管はひどく荒み、もう注射針を刺すことが容易でないほど細く脆弱になっていた。注射がうまくいかずにそのまま帰宅すると、しだいに薬を注入できなかった全身から冷や汗のような汗が滲み、じっとしていることができず悶え苦しんだ。地団駄を踏みながら手を伸ばしても誰も助けてくれるものはいなかった。
残暑が過ぎた頃だった。阿武隈山地に沈みゆく落日が玲瓏に赫く空を染め、いちばん星が煌めきはじめていた。日ごろからよく覗いていたイオンモール名取のペットショップで、まだ生後3ヶ月ほどのつぶらなひとみのシーズーのメスと出会った。抱き上げると白とゴールドの体毛の壊れそうな小さな身体にも、懸命に生きようとする鼓動と温もりがあった。すぐにほんの小さなピンク色の舌でオレの顔を舐めはじめた。
オレは迷うことなくただちに契約を済ませると、トイレやゲージなど必要なものをすべて購入し、まだおしりを振りながらよちよち歩くシーズーと一緒に帰った。
すぐに名前をシーとつけた。
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