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匠は器用にドアを開け、足で閉める。開けっ放しにすると、犬や猫たちが入ってきてしまうからだ。
ここは客間。来客用の部屋なので、家具は小さなテーブルくらいだ。備え付けの大きなクローゼットには、来客用の布団が入っている。そして床には、ふかふかの絨毯が敷かれていた。
智里はそこにゆっくりと下ろされ、そのまま押し倒される。
「匠っ」
「欲しい」
「え……」
匠の視線に射抜かれる。その真剣な眼差しに、心臓がものすごい勢いで暴れ出した。
唇が落ちてくる。熱い。何度も重ねられ、僅かな隙間をぬって舌が滑り込んでくる。
「んぅっ……」
まるで味わい尽くすかのように縦横無尽に動き回るその熱に、智里の頭が朦朧としてくる。
「智里……」
そのうち、匠の手が智里の衣服にかかった。その刹那、脳が危険信号を放つ。
このまま流されるな!
「だめっ」
「嫌だ」
智里は強引に身を起こし、匠を軽く睨む。そんな智里を匠が不満げに見つめる。
「ここ、客間だよね?」
「一応」
「一応でも何でも、お客さんが泊まるための部屋!」
「滅多に来ない」
「それでも! ……汚しちゃったらどうするの」
後半は、消え入るような声になる。
あのまま流されて事に及べば、絨毯を汚してしまうことになる。それに気付き、止めたのだ。
決して嫌なわけではない。その気持ちが小さな声として表に出る。
まだ陽も高いというのに。それなのに、匠から求められると拒めない。むしろ──。
「よかった。拒否じゃないんだな」
匠はすぐさま機嫌を直し、クローゼットの中から布団を出して敷く。
「待って。それ、お客様用の布団……」
「汚れたら洗えばいい。それでもだめなら買い直せばいい」
「~~~っ」
洗ってもだめなほどの汚れとは。
つい想像してしまい、智里は顔を覆ったまま転がった。
恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。
「ほらもう、さっさとしろ」
「さっさとって!」
「俺はもう限界なんだよ。一刻も早く智里が欲しい」
「……っ」
匠は射竦められている智里を布団まで運び、再び押し倒す。その間、僅か数秒。そして行為は続行される。
「匠が……こんなだとは思わなかった」
「こんな? あぁ、性欲が強いって?」
「ばっ」
馬鹿と言おうとしたところで唇を塞がれた。
匠はニヤリと笑い、智里の耳を指で何度も撫でる。その手つきが官能的で、智里は必死になって声を抑える。
しかしそんな智里の努力を無にするかのように、匠は唇を寄せ、低い声で囁いた。
「そんなの、智里だけに決まっている」
智里はたまらず甘い声をあげる。そこからは、ノンストップだ。
智里はこれでもかというほど優しく、時に激しく、もういいと音を上げるほどにしつこく、匠から愛される羽目になったのだった。
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