07-1.その後

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 匠は器用にドアを開け、足で閉める。開けっ放しにすると、犬や猫たちが入ってきてしまうからだ。  ここは客間。来客用の部屋なので、家具は小さなテーブルくらいだ。備え付けの大きなクローゼットには、来客用の布団が入っている。そして床には、ふかふかの絨毯が敷かれていた。  智里はそこにゆっくりと下ろされ、そのまま押し倒される。 「匠っ」 「欲しい」 「え……」  匠の視線に射抜かれる。その真剣な眼差しに、心臓がものすごい勢いで暴れ出した。  唇が落ちてくる。熱い。何度も重ねられ、僅かな隙間をぬって舌が滑り込んでくる。 「んぅっ……」  まるで味わい尽くすかのように縦横無尽に動き回るその熱に、智里の頭が朦朧としてくる。 「智里……」  そのうち、匠の手が智里の衣服にかかった。その刹那、脳が危険信号を放つ。  このまま流されるな! 「だめっ」 「嫌だ」  智里は強引に身を起こし、匠を軽く睨む。そんな智里を匠が不満げに見つめる。 「ここ、客間だよね?」 「一応」 「一応でも何でも、お客さんが泊まるための部屋!」 「滅多に来ない」 「それでも! ……汚しちゃったらどうするの」  後半は、消え入るような声になる。  あのまま流されて事に及べば、絨毯を汚してしまうことになる。それに気付き、止めたのだ。  決して嫌なわけではない。その気持ちが小さな声として表に出る。  まだ陽も高いというのに。それなのに、匠から求められると拒めない。むしろ──。 「よかった。拒否じゃないんだな」  匠はすぐさま機嫌を直し、クローゼットの中から布団を出して敷く。 「待って。それ、お客様用の布団……」 「汚れたら洗えばいい。それでもだめなら買い直せばいい」 「~~~っ」  洗ってもだめなほどの汚れとは。  つい想像してしまい、智里は顔を覆ったまま転がった。  恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。 「ほらもう、さっさとしろ」 「さっさとって!」 「俺はもう限界なんだよ。一刻も早く智里が欲しい」 「……っ」  匠は射竦められている智里を布団まで運び、再び押し倒す。その間、僅か数秒。そして行為は続行される。 「匠が……こんなだとは思わなかった」 「こんな? あぁ、性欲が強いって?」 「ばっ」  馬鹿と言おうとしたところで唇を塞がれた。  匠はニヤリと笑い、智里の耳を指で何度も撫でる。その手つきが官能的で、智里は必死になって声を抑える。  しかしそんな智里の努力を無にするかのように、匠は唇を寄せ、低い声で囁いた。 「そんなの、智里だけに決まっている」  智里はたまらず甘い声をあげる。そこからは、ノンストップだ。  智里はこれでもかというほど優しく、時に激しく、もういいと音を上げるほどにしつこく、匠から愛される羽目になったのだった。
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