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「はい、俺ね。えー、武加寿美といいます。精神科医やってます。」
肉食女子の、えーっと名前なんだっけ。
あ、中野彩花ね。
彼女が食いついて来た。
「え⁉︎皆さん、お医者様なんですかぁ?あ、高橋さんは?」
「言い忘れました。僕も医者。脳神経外科の専門医です。」
「すごーい。」
武士がわざとらしく咳払いをしながら、
「えーっと、俺。自己紹介してもいいかな?」
ドクタースマイルで繋げる。
「細井武士です。30歳。産婦人科医でーす。市内の総合病院に勤務してまーす。」
何故かパチパチパチと拍手する女性陣の中で、ひとり明らかに浮いている肉食女子彩花。
俺たち全員が医師であることに、更に気合いが入ったようだ。
「この場では、下の名前で呼び合いましょうか。」
由那ちゃんが場を和ませる。
「はい!賛成ー。」
彩花が張り切って言う。申し訳ないが、頭が悪そうで簡単に股を開きそうだ。
ひろ先生は何だか落ち着かない様子でキョロキョロしている。
「取り敢えず、皆んなお腹空いてるでしょ?食べよう、食べよう。」
まぁ、そんな感じでスタートしたわけだが、嫌な予感は的中した。
俺が、向かいに座っているお目当てのひろ先生と話していた時だった。
「あっ。そういえば、先輩。昨日はあれから大丈夫でした?」
肉食彩花が俺たちの会話に割り込んできた。
ひろ先生は一瞬、罰が悪そうな顔をし、小さな声で
「大丈夫、大丈夫。」と返事をしたが、彩花は更に大きな声でこう言い始めた。
「昨日ー。職場の幼稚園に変な手紙が届いたんですよー。」
ひろ先生が「あーちゃん、その話はいいから‥‥」と言い掛けるが、圭介が食いつく。
「何、何。なんか面白い話?」
目の前のひろ先生は、今にも泣きそうな表情をしている。
気のせいか。
一瞬、さくらちゃんが彩花を睨みつけたような気がした。
多分、内輪の話で、この場で話す内容ではないのだろう。
俺は話を逸らそうとするが、圭介は更に食いつく。
「何かあったの?」
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