はじまり

3/18
前へ
/279ページ
次へ
「で、お前はなんであの子に拘るわけ?」 土曜の夜、遊ぶ女が見つからない日は決まって俺の家にやって来る。 俺のベッドにゴロンと横になりながら圭介が問う。 「おいー、、ベッドはやめろって言ってんだろー。」 俺は少々潔癖症だ。 「悪い悪い。」 悪びれた素振りのない圭介。 いつものことだ。 「あの子、あの保育士さん?特別可愛いってわけでもないじゃん。てか、ブスじゃね?」 「女性は顔じゃねーよ。」 「あ、じゃあ加寿美もあの子の顔は不細工だと思ってんだ。」 圭介は笑っている。 圭介は美人でスタイルのいい女性とばかり付き合っているが、大抵半年続けばいい方だ。 「圭介も美人は飽きたってこの前言ってたよな。」 「まぁね。美人はさー面倒臭いんだよ、色々。  あ、でも、だからってあの子みたいなブスは勘弁だ  けどな。」 「‥‥ブスブス言うなよ。」 確かに、あの【ひろ先生】はお世辞にも可愛いとは言い難い。 でも不細工かといったら、決してそんなことはない。 園児たちに向けるあの笑顔は、俺にとっては天使にしか見えないのだ。 「まぁ。圭介にはまじで感謝してる。」 圭介は満更でもない顔をして、 「親友の頼みだからな。」と言った。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加