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圭介は本気で恋愛をしない。
来る者は拒まず、去る者は追わず。
だからといって軽薄なわけではない。
付き合っている間は、金も惜しまないし、浮気もしない。
彼女の愚痴や悪口も、圭介の口からは聞いたことがない。
じゃあ、どうして長続きしないのか。
圭介には結婚願望がないからだ。
「結局さ、医者の俺が好きなんだろ。結婚すりゃ働く必要もないし、金には困らないし、セレブ生活出来ると思ってんだよ。だからさ、俺に結婚する気がないってわかるとサッサと別の金持ち見つけんだよ。」
「そんな子ばっかりじゃないだろ?」
「俺は精神科の医師だぞ。‥って、お前もか。」
俺たちは職業柄、相手の何気ない仕草や表情に敏感だ。
圭介は一度だけ俺に話してくれたことがある。
父親の病院を継ぐのが嫌で、本当は外科医を目指していたこと。
訳あって外科医の夢は諦め、結局父親の跡を継ぐことになった。
「でさ、来週の土曜19:30。向こうは由那入れて4人だから、こっちもあとひとり、誰に声掛ける?」
由那とは、圭介の元カノ、いや、元々カノだ。
「由那ちゃんとあの子が知り合いだとはね。運命だと思わない⁉︎」
俺がそういうと、圭介は顔だけ俺の方を向き、
「お前、いつからブス専になった?」
と揶揄うように笑った。
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