トイレットペーパー

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欲が水に溶けた まま 流れてゆく透明を見た 命が途絶えるようにそれは消えて 自分が助かるようにと無責任に伸ばした手には 少しだって透明になりきれなかったままの「白」が 絡まり、付いていた 嘔吐したときの舌の根元が絞まる音 やるせなさを飲んだ胃の中で燃える葛藤と言い訳が癒着する 便器に近づけた顔の情けなさと強かさ 全てトイレットペーパーが透明にしてゆく 左手にできた吐きダコは日々の証か 右手で吸う煙草の煙が日々を殺した 汚い両手で今日も僕らは日々を溶かして捨てる 自暴自棄になりきれない静かな休日 希死念慮を踏みつけたままのバスマット そしてそれは日々だから 嗚咽を透明にしたまま過ごしていくのだ 諦めなよ 明日を選ぶしかないらしい 実家に置いてきた大切なものを今思い出した
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