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水族館
濡れた床が嫌いだった、ので
僕はいつだってバックヤードを気にしてた
汚らしい苔の付いた水槽も
誰のものか分からない長靴の中の水だって
嫌いだった、ので
吐き気が収まるまでサメを見ていた
ああ、アイツはいいなあ
左利きの生きにくさをふいに思い出す
開けにくい缶詰め
掠れるボールペンの文字
指のささくれが気になって集中できない館内で
僕はまだバックヤードの汚さを思う
生き方そのものだった
人の裏ばかり見てしまうそんな僕の
(直そうとも思ってないが)
回遊魚を見た、ので
思う
一人で歩ける人間で良かったと
そんなふうに思う僕は最低でしょうか
汚いバックヤードから意識が離れない僕は
情けない人間でしょうか
サメは大きくて格好良かったです
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