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隙間
前に座ってるひとがわたしを見てる
虚ろな目をしたままどこかを見てる
ギィ、と揺れた車内でわたしたちは目も合わせずに
どこかの透明な隙間を見合って座っている
途端、どこからか風が吹いた
きっとそれはわたしとあの人との隙間に吹いた風だった
見ず知らずの人との隙間に吹いた風に
違和感はなかった、が、けれど
前提として違和感があるかもしれないという
その考えに違和感があった
なぜ、違和感を持つかもしれないと思ったんだろう
ギィ、とまた揺れた車内で今度は
隣に座る恋人との間に風が吹いた
もちろん(当たり前のように)(無意識に)
違和感はなかった
風は平等らしい
車内の電子広告にそう書いてあった
気がする
そうか、わたしはそれを知らなかったな
好きな人との間に吹く風は甘くって
知らない人との間に吹く風はどうでもよくて
きっとそんなんだと思ってたんだ
だとしたら
戦地で吹いた風、わたしにだって
(終点で降りた駅の改札口で強い風が吹いた)
(目を一瞬細めて見えた景色は)
(偽善)
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