とりかえっこ、いのち

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とりかえっこ、いのち

ハイ死にました んー、この子は単三でいいかな ハイハイ死にました そっちは単四でお願いします 流れるレーンに死体と電池 この工場を一歩出たらそれはこころと呼ぶと規則にあります こころを入れ替えて出荷して 運が良ければ再起動するらしく ボクは自分がなにをしているのか分からないまま レーンの上を流れる死体に電池をはめます ところでボクは いつになったら止まるのでしょう こころ、と呼ばれるボクのこの乾電池は 今か、明日か、来年か いつかは止まってしまうから その時にボクもこのレーンを流れてどこかへ 行くのかな 死ぬこと自体は怖くない 生きることよりもしかしたら簡単かも 考えながら入れ替えるこころ ザザ、と走るノイズにレーンが重なる いつかの記憶、見慣れた景色 ああもしかしたら今ボクが考えていることすらも カチッとはめられた残量僅かな乾電池 何回流れたか分からないレーンを前に 流れ続ける死体にこころをのせて 胸に手を当て、 知りすぎたその場所を そりゃそうか、入っていたのは錆びた乾電池 これはエゴかな もういいやって諦めた、ボクのこころを 見知らぬ誰かへ 贈ります
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