オーブンレンジ

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オーブンレンジ

深夜のキッチン、冷たい足先、と、殺意 起きる時間まで時計は4回転半 開けた冷蔵庫から零れる冷気の中で死んでいるあの人をおもう わたしの為の言葉じゃないから酔えると思うけど わたしの為だと言えてしまうから楽なんだと思うけど わたしはただただ迷惑ですけれど まな板の上の板チョコを足先から刻む 懲役 ボウルに入れたチョコレートはお湯のほんとうの温度を知らずに溶ける 「それお世辞かもよ」 愛想笑いするわたしにわたしが投げる。当然。ひとりだし。 「いや知ってたよ別に」 そりゃそうだわ、ってわたしが納得。これも当然。わたしだし。 マフィンカップを並べて生地を流す これも、それも、端から端まですべて 棺桶 イエベだね(笑)って、まあいやはい別にそうですけど 素直さが足りないよ、かわいくないねホント君「はは」 えーお弁当作ってきてるんですかぁ?すごぉい!に、勘ぐるわたし 直接言えないわたし 笑って誤魔化すわたし マフィンを棺桶にして焼き上げるくらいしかできない わたし オーブンで焼いてる間に吸う煙草 うるさい換気扇 「うるさ」 ここなら言えるのに 焼きあがった棺桶 墓荒らし、とか思いながら熱いままに頬張る、馬鹿甘いマフィン
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