月の光

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月の光

「輝いている」と、君は言うね ごめんね隠すつもりはなかったけれどそれはとっても嘘なんだ そんなに見上げないでくれないか 夢を託さないでほしいんだ 過去を求めて泣かないで 未来を想って歌わないで、ほら ワタシはただの偽の光 君を照らす光はワタシだって 貰ってきたものなんだ 気づけば それは あった ワタシを照らして、それが君を照らした ワタシは神じゃなくってね ワタシは願いに弱くってね ワタシは想いを抱けなくて 「嗚呼」 ごめんなさい そんなに綺麗な目で見ないでほしい 輝いてきらきらなのは ワタシのおかげなんかじゃないのだから 「知ってるよ」 「知ってるよ」 「アナタが独りで輝けないこと」 「だから好きなんだ」 「僕も独りじゃ光れないから」 「太陽がアナタを、」 「アナタが僕を、」 僕の目が輝いたままで天を仰げるのは 「月、アナタが嘘だと笑って輝くからです」 少し欠けた丸い月。存分に光れ、嘘で照らせ。仰ぐ人の涙は月光。
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