街を蹴る

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街を蹴る

「あ、落とし物」 見つけた誰かの四角い自意識 立方体 手のひらに収まるその角と角と、角と角と角と角と角と角 小さく威張る痛々しいソレ(既視感が、有る) 震えたまま何かを訴えて手の内で泣く 誰の落とし物か どこまで行ってしまっただろうか ふと 後ろを振り向いて 静寂 点滅してたはずの信号機 鳴っていたはずのクラクション 俺の耳には五月蝿い乳児の声 懺悔 震えは 祈り 謝罪 逃避 これは 俺の 自意識 認めたくない、まま、握る 刺さった角が痛くてたまらない ついに投げた自意識を 蹴って蹴って、街を蹴り、歯を食いしばって逃げ回る 無音の 街路 日々があった 人生があった そこには時が 全てがあった 人が 俺が 蹴った道がこの先に続く 街の路
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