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お席にどうぞ
朝日のやわらかさに気づいて目が覚めた
すこし背伸びをして買った珈琲豆を挽いて香るキッチン
ワンルームでは浮いてしまう大袈裟な珈琲メーカー
昨日の頭痛は消えていて
静かにリビングで今日を始めた
すこし賑やかになってきた外の音に耳を傾け
友からもらったビスケットを頬張った
あまい、おいしい
珈琲は苦いけれども
それがいい
寝る前に済ませた部屋の掃除と片付けと
狭い部屋だがここは僕のあんしんの場所
読めずにいた本に手を伸ばす
文字は揺らがず僕を受け入れた
進むペエジに踊る物語
そうだったそうだった僕は本が好きなんでした
すべてから僕を遠ざけた鬱は自ら遠ざかり
いまはいまだけは平穏な今日が進んでいく
なんとなくつけたテレビでは
獅子座が一位と輝いていた
僕はその下にいて、ラッキーアイテムは珈琲
そうかいそうかい
なんだかとてもらくなきもちでいられるな
ぼーっとしていた間にすこし冷めた僕の珈琲
味が際立ってより好きな味になる
あ、そういえば
こんな日に取っておいたチョコレイトもあるんだっけ
布団から出られない真っ暗な部屋の中で昨日のことを思い出す
あああれは、昨日のあれは今日の悲劇の前座だったのか
いや違うこれは古い映画館での二本立て
いまからはただ、少し暗い映画が始まるだけでした
「チケットを拝見。それではお席にどうぞ」
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