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試着室
どの服にしようか
これは似たのを持っているし、こっちはサイズが合わないな
ああそういえば、どうしてここにいるんだっけ
店内に並ぶ古着と、一人佇む店員
「あの」
「いらっしゃいませ」
「これ、試着できますか」
「ええどうぞ。こちらへ」
隅にある小さな部屋
どこかで聴いた洋楽が静かに流れていた
「どう、ですかね」
「お似合いですよ」
「ここは……」
「そろそろお気づきでしょう」
店員は話す
死を迎えた者たちが着ていたものが並ぶ死後の世界の古着屋なのだと
「こんなに楽しんでいて不謹慎ですかね」
目移りしてしまう服好きな私は好奇心を隠せないままに尋ねた
「いいえ」
長いこと選んで、ここを出るために選んだ服は結局そのままの服
「お似合いですからね」
「一番気に入ってる服を着て飛びましたから」
困り顔で笑う店員に挨拶をして今から川を渡ります
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