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工場夜景
脈々と流れてゆくゆく光
胸とおなかの間で包む考え事さえ
流れていってしまいそうで
あれほど苦しんでいたのに
手放し難く思ってしまう 何故
色を変えて光る眩さがわたしを撫ぜるが
苦しいままだった
ただ眩しさが星を真似るように光るだけ
わたしの目にはいま何が映っていて
どんな理由で不安を引き止めるのか
綺麗だった あたたかかった
ただそれだけだった
場所を変えて背骨を伝う不安が
綺麗な景色と相反して膨らんでゆく
昔こぼした小さなビーズたちを
拾い集めている時に
うかがう母の顔
膨張したそれが夜を覆ったままわたしを見た
後ずさりすることで和らぐような
確証もなにもない不安が
ゴウ、ごう、と動く工場夜景を負かす
脈々と流れているのは不安だった
目の前のそれは光なんかじゃなくて
へりくつなわたしの反射光
光る粒が、すこしでも
私を安心させられたのなら
勝ちだったのに
目の前にあるのはわたしに負けた
眩い光
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