口角炎

1/1
前へ
/149ページ
次へ

口角炎

2Bの鉛筆で描いた似顔絵に あの子はわざと痛みを足した 描かなくたって良かったのに 左の口角を黒く塗りつぶして もう、と笑うその口角すらも ちぎれそうに痛い、じくじく 嫌なやつだった この片道切符はパンチを使い きっと開けられたこの痛みは 治ることさえ知らないまんま 2Bの鉛筆で描いた似顔絵は 赤い花がついて一等賞だった どこまでもわたしが描かれた 嫌な話だった ホットケーキを焼いた朝 裏っ返すタイミングをみた ぷつぷつと丸く空く穴が 気持ち悪くって 左の口角を思い浮かべた ぷつぷつと、沸騰する左 生焼けのままの傷が、焼けてゆく 裏っ返すタイミングなんて ないままに じくじくとしたままの傷は 丸い穴として左に在る 気持ち悪いやつだった 焼きすぎたホットケーキと 生焼けの口角炎 大きく頬張る ホットケーキ 甘く、鉄の味、2Bの鉛筆
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加