蟷螂

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蟷螂

鬱を膨らませたらまるで卵になりました 小さな考え事をそれぞれに含んだ袋は 幾日も幾日も布団の中で育ちます 恐竜のような名前の薬で 抑えてゆく衝動を 恐竜のような名前の薬で 抑えてゆく鬱々を じっと見守るその袋は まるで 蟷螂 のよう でしょう ぴちん 弾けた弾けた逃げなくちゃ 蟷螂の子らが散る散る、鬱が散る 隠してた袋の中には 詩がいくつもいくつもあった 詠んだ短歌があった 泣きながら書いた小説があった それらが弾けた もう止まらない 蟷螂の子らは、逃げたその先でまた 蟷螂の卵を作ります しかしそれは伝染ではない 鬱は伝染らない ただかたちとして鬱が移動し また文となりそれをわたしが読んで そういったふうに廻る、のです 蟷螂が好きです その鎌が、いつの日か わたしの命を刈り取ってくれそうだから 蟷螂が好きです
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