タオル

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タオル

ご覧 切り過ぎた左腕の赤筋がタオルにへばりつく ご覧 繊維の一つ一つが君を守ろうとしている ご覧 もう今更無理なのにね、って君は笑うんだね 日々を人差し指と中指で歩く車窓の外には大怪獣 揺られてたどり着いた校内は静まり返っていて 整列された机だけが迎えてくれるだろうさ 痛いかいその左腕は 自動で付いた冷房の適温は誰に向けての温度だろう 君は飛び込む、その中へ、その適温へ そして君がその温度の中心になるんだ 風呂場で泣きながら切り過ぎた左腕のこと もう忘れたかな 風呂場で泣きながら切り過ぎた左腕のこと いや忘れないよな 忘れないよなあ 死にたかった訳じゃない 言い訳 消えたかっただけ 言い訳 ただ自分を整えようとしたただけ 言い訳 言い訳(でも、そうでもしないと君は) 流れる血を見て冷静になったかい 慌てて真っ白なタオルを腕に巻き付けた君 君の一部(血)を吸う吸う白いタオルは柔らかさを失っていく そのタオルが彼でも彼女でもどちらでも良いのだけれど、 それでも彼(彼女かな)は君の血を吸って重くなっていく 命の流動(鮮血に命があるとしたらだけれど) 後悔の流動(君はあの時後悔していたかな) 痛みは流動しないまま(タオルは最後まで痛がらなかったね) 赤く染まったタオルに君は言う 「ごめんなさい」 白を失ったタオルは君に言う 「ごめんなさい」 互いに、そう、互いに 痛くないかい?左腕は
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