しっぽの救いはあてにならない?

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 また、手がなにかを握った。  いや違った。  握られてる。  目を開ける。  あたしはもう、落ちてなかった。  病院のベッドに横たわり、天井を見上げていた。 「目が覚めたか!」  涙声に横を見ると、ダンナが目じりを拭いながら、あたしの手を握ってた。 「道路の陥没事故に巻き込まれたの、覚えてるか? いっときは危なかったんだぞ。よかった……」  あー、死にかけたのか。  じゃああれはあの世だったのかな。 「あいつに会ったよ」 「あいつ?」 「猫」  ダンナは奇妙な顔をした。 「ペットロスの話か?」 「ちゃうちゃう。三途の川を渡るか渡らないか的な話。あいつがこっちに帰してくれたみたい。かなり強引な手法だったけど」  ダンナは首を傾げる。 「連れて行かないでくれ、って祈ったけど、そのせいかな」 「猫が跨がないように死人に小刀持たせるって言うし、あの世と猫はなんか関係あるのかもね~。でもそんな義理堅いやつには見えなかったけど」  あたしはそう言って、身体を起こそうとした。その拍子に膝のうえからなにかが落ちる。  ちりん。  鈴が鳴る。  ねずみのおもちゃだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加