6 記憶のかけら

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「実は、鷹野のこと、ちょっと人を通じて調べてたんだ」  知らない同じ番号から何度も尊が電話を受けていたことを思い出す。もしかしてあれは、渚のことを調査していたのだろうか。 「鷹野の両親は事故で亡くなったんじゃなく、本当は鷹野のことを捨てて逃げたんだ。その後、親戚の伯母さんの家に引き取られた。伯母さんは、鷹野グループの関連会社を経営してて、金銭的には恵まれた環境で育ったはずだ。でも、鷹野自身、愛された記憶がないから、お金で人を釣るようなとこあって、中学のときは友達の誕生日にブランド品のバッグをあげたり、何かとお金を配ったり、平気で大きな嘘をつくこともあってちょっと異常だったらしいんだ。  多分、亡くなった伯母さんは気がついていた、鷹野の様子がおかしいことに。何か精神的な疑いがあるんじゃないかって、精神科にも通っていたらしい」 「え?」 「中学の頃、鷹野はある同級生の男子と付き合ってたらしいんだが、その男子のためだったら、周りに危害を加えることもあったとか。行動が異常にエスカレートして、それが問題になり引っ越しと転校をしたらしい。結局、伯母さんの力でもみ消したらしいが」  そんな話、初めて聞いた。渚とは高校から一緒だったので、中学の頃のことは全然知らなかった。 「伯母さんは、鷹野の亜子に対する態度もおかしいと思って、だから、きっと遠ざけたくて、鷹野を海外の大学に行かせたんだと思う。でもその伯母さんも亡くなって、鷹野が日本に戻ってきたのは、俺たちの結婚を知り、きっと、亜子を俺から離すためだ。亜子に連絡が来たのはこの間だと思うけど、帰国したのは三ヶ月前らしい」  三ヶ月前というと、咲子が Tea Moon で働き始めた頃、そして羽根井先生の赴任が決まった時期などと重なる。 「渚はどうして……雪斗のことは?」
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