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渚の入院する病院に行くと聞いて、尊は反対した。もう関わるべきではないと。でも、私は渚にどうしても会わなければならない――その心の奥の訴えに抗うことはできなかった。
執着心――前に尊が言っていたことを思い出す。それは私の思う「愛」とは絶対に違う、きっと。でも、渚にとっては、愛を知らなかった彼女にとっては、「愛と似た何か」だったのかもしれない、と今になって思う。尊が渚の過去について話していた、中学のとき付き合っていた男子にしたことも、私にしたことも。自分ではない、誰かへの執着――それは渚にとっての安定剤であり、同時にそれを阻む他の誰かへの攻撃性も常に備えていた――。
渚の病室に向かうと、ちょうど鷹野グループの秘書だという四十代くらいの男性が個室から出てきた。入れ替わるようにドアを開けると、窓の向こうに目をやった渚の姿が。こちらに気がつくと、顔をぱあっと明るくする。
「亜子」
その呼び声が懐かしく、渚と過ごしてきた日々を思うと胸が苦しい。でも同時に、この前の渚の不気味な高笑いを思い出す。
「お見舞いに来てくれたの?」
その言葉にも黙り込む私にはお構いなしに、病院食がいけてないだの、ベッドが硬いだの、早口で話し始める。
「渚」
被せるように言う私の言葉に渚は話すのを辞める。
「私、渚のこと、許せない」
横に垂らした腕の先で拳をギュッと握りながら続ける。
「私の周りの人を傷つけたこと、許せない」
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