6 記憶のかけら

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「亜子、何言ってんの? どうしてそんなこと言うの?」  渚はまるでなんの悪気もないみたいな顔で言う。 「私はただ、亜子に必要とされたかっただけだよ。亜子のことを惑わす周りの奴らはみーんな邪魔。私だけいればそれでいいって、亜子に思ってほしくて。亜子を傷つけるやつは許さない。そういうやつを排除してきた、それだけだよ」 「……私を傷つける人、じゃなくて渚に都合の悪い人を排除してきたんじゃない? それに私は傷ついてなんかない。というか、別に傷ついてもいい。それが必要な痛みなら」  私のきっぱりとした物言いに渚は一瞬怯む。 「尊は、私のことをずっと守ってくれた。どんなに渚が邪魔しようと、私は尊と一緒にいたいと思ってる」 「亜子、どうしちゃったの? だって、尊君はどうせ、雪斗君の代わりでしょ?」  渚はにやりと笑う。 「違う。尊は、私にとって一番大事な人だよ」  渚の目を真っ直ぐに捉えそらすまいとして言う。  渚は黙り込み、先に目をそらし窓の方に顔をやる。窓の先に夏の濃い青が広がっている。  同じ空の下、渚と過ごしてきた日々を思い出す。同じ色なのに、今はもう、その日々は戻ってこない。二度と――。 「ねえ、渚。私、渚と普通に友達でいたかったよ」  そう言い残し、私は病室をあとにした。
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