6 記憶のかけら

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 一週間後――。  羽根井先生が見つかった。見つかった場所は、羽根井先生の、つまり雪斗の実の母親の入院先の病院だった。羽根井先生は、雪斗のことで精神を病み、入退院を繰り返している母親の看病をずっと続けていたのだ。  病室を訪れた私たち二人の姿を見ると、羽根井先生は目を伏せがちに頭を下げる。飲み物を買って、病院の外に出てベンチに腰掛ける。  尊のことは誤解であったこと、渚のこと、雪斗は事故であったこと、その原因の一つに私もあったこと――話を聞いて、まだうまく整理ができない様子で、でも、彼はしきりにうなずき理解しようと努めているように見えた。尊の方を見ると、 「ごめんなさい。あなたに怪我を負わせてしまった」  羽根井先生は立ち上がり、真っ直ぐに向き直って謝った。 「実は警察に行ったんですけど、被害届が出てないって」  その言葉に、尊は少し間をおいてから話し出す。 「こちらこそ、ごめんなさい。俺があの日、雪斗を電話で呼ばなければ、とずっと後悔してた。正直、あなたから謝罪を受けるような立場にないんだ」  それを聞いて、羽根井先生は静かに話し始めた。
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