1 彼の写真

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 クリーム色のカーテンが揺れ、湿気を含んだ六月の風が頬を撫でる。パタパタと廊下を駆けるスリッパの音が響く。シーツの、ツンとする消毒液の匂いに、お見舞いの花々やフルーツの爽やかな香りが混じる。どこか懐かしい感じがする。 「日比谷先生、大丈夫ですか?」  体を起こした私の元へ、学年主任の早坂先生が駆け寄ってくる。 「あらもう、痛々しい」  白い包帯の巻かれた足首の捻挫と腕の打撲痕を見て、早坂先生は顔のパーツを全部中心に集めたような表情を作る。 「日比谷先生。びっくりしましたよ。階段からズダーッと転げ落ちたんですもの。あんな、前が見えなくなるほどいっぺんに運ぶ必要なかったのに。でも折れてなかったみたいでほんとよかった……」 「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」 「何を言ってるんです。こちらこそ、仕事中にこんな。手続きなどは心配しなくていいですから。落ち着くまでは、まず治すのに専念してください。学校の方は気にせず」 「すみません」と言いながら頭を下げていると、今度はスーツ姿の(たける)が息を切らして駆け込んでくる。  前かがみで膝に両手をあて、息を整えた尊は、 「はあ、びっくりした。大丈夫か? 体育祭の片付け中に怪我したって……」  今夜夕食を食べに行く約束をしていたので、怪我で行けない旨を連絡してはいたが、まさか病院に来るとは思わなかった。
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