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6
君は確かに消えた。
風の噂で性転換手術を受けたとか、そんな話を聞いた。本当かどうかはわからない。わからなくていい。
そして手紙が届いた。朝、玄関のドアのポストがカタリと鳴った瞬間に、わかった。ああ、君だって。
手紙は舞う。花びらのように、雪のように、桜のように。
どこに行ったかなんて聞かないよ。追いかけないよ、私は私だから。
一筆箋の最後の一切れが、別れを惜しむようにゆっくりと私の手のひらを離れる。
夜の高速道路。凪いだ紺色の海。ホタルのようなタバコの灯り。君の横顔。君の茶色の瞳。君の言葉。思い出も花びらのように舞う。
どこにいようと、私が私であることに変わりはない。そして、君が君であることに変わりはない。
大きく息を吸い込んで、顔を上げる。
「さよなら、元気で」
嫌いで仕方がない私の声も、花びらと共に風に舞う。
「さよなら」
柔らかな風が、花柄のワンピースの裾を揺らした。
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