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 口数の多い方ではない君と私が、こうやって何度もドライブに出かけているのは不思議なことだった。  君と私とは基礎工学の授業で、たまたま隣同士に座っていただけ。授業終わりに唐突に、当たり前のように「じゃ、行くか」と一言言って君は立ち上がった。独り言かと思って無視していたら、「来ないの?」と顔を覗き込まれた。茶色の瞳に私が映っていた。  気づけば一言、「行く」と言って君について行っていた。  君が連れていくのは、近所の薄汚れた中華料理屋だったり、はたまた県境を越えたど田舎にある蕎麦屋だったり、どこで知るのか見当もつかないような店ばかりだった。かと思いきや、カップルに人気の浜辺に何故か何も見えない夜に連れて行ったり、妙に行列のできたクレープ屋に連れて行ったりした。  君はどこに行くのかも言わない。私もどこに行くのか聞かない。周りから見れば単なる大人しいカップルだろう。だが、私たちの関係はそんな一言で言い表せるものではなかった。 「はい」  何の説明もなく、車に戻ってきた君がカフェオレの缶を手渡す。手に取るとほんのり温かい。ありがとう、と小声で言い、プルタブを起こす。  君も隣でブラックコーヒーの缶を開けた。しばし車内にコーヒーの香りが充満する。  一口、二口飲んだ後、サイドブレーキを解除してまた車は走り出す。  微かな音で流れるラジオのニュースが、心地よく鼓膜を揺らす。  今日はどこに行くのだろうか。
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