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 そういえば、君の秘密を聞いたのも、夜の海だった。  凪いだ海は静かで、小さな波が浜辺を遊ぶように跳ねていた。  あれは夏の終わり、秋の始まり。 「どうして私をいつも連れていくの」  波打ち際を裸足で歩く君を追いかけながら、私は聞いた。 「同じだと思ったから」 「なにが」 「花のワンピース、似合うんだから、胸張って喋って良いと思う」  くるりと振り向いて君は笑った。はにかんだ笑顔が子供みたいな人だった。 「……でも、私が喋ったら、変でしょう」  立ち止まって、ぎゅっとワンピースの裾を握りしめた。こんな声嫌いだった。裾から覗く、女ではない足も嫌いだった。足の間についているものが嫌いだった。願いとは裏腹に、どんどん体格が良くなっていくのが怖かった。 「君が女だと思うなら女だし、君が何を着て何を話して何をしようと、君が君であることに変わりはないだろ」  変なんて思ったことないよ。俺だってそうだから。  そう言って背の高い君は哀しげに笑った。胸ポケットからタバコを取り出して火をつける。短い茶髪が潮風に揺れた。  羨ましい。羨ましかった。そしてそれを捨てた君が憎かった。君に私の気持ちなんてわからないと思った。誰よりもわかっていたことも、本当は分かっていた。 「捨てるんなら私にちょうだいよ。捨てる前にちょうだいよ。わ、わたしは、ずっと女の子になりたかった……」 「それは君だって同じだろ。俺だってずっと、男になりたかったんだ」  そう答える君の瞳は少しだけ潤んでいた。
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