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①
それまでのおれは、特に空腹ではない時でも、ついつい食べてしまっていた。
そのせいで、気づいたら体重は大台を超えていたのである。身長百六十八センチで体重は百五キロ。肥満度を表すBMIは三十七。
明らかな肥満である。それも重度の肥満。
「いやまあ、健康ならいいんじゃね? たしかに太ってはいるけど、オレもBMIが二十四あったよ。標準ギリギリだよ」
会社の同期の清水が、慰めるように言ってくれる。
「健康診断の数値は全部正常なんだ。でも、それはまだ若いからだ、ってナースに言われた」
おれは会社の産業看護師である森田さんの顔を思い浮かべる。彼女はまだ若い女性で、おれに健康診断の結果を渡しながら冷ややかに言ったのだ。
「この体重では、いずれ何かの病気を発症するのは目に見えています。早急にダイエットを検討して下さい」
「はあ」
おれの気のない返事に、森田さんが睨みつけるような目をした。彼女は美人なので、その目つきは迫力があった。
「体重を半分にしろ、とは言いません。でも、せめて健康体重である六十三キロを目標に痩せなさいって、先生も仰ってました」
産業医からの命令だったか……。
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