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エピソード1
ある国の王子様は言った。
「じいや、僕は恋がしたいぞ、どうにかしろ。」
爺やが答えた。
「坊ちゃん、恋はお相手様との絆がとても大切です。今までのように、爺や一人で何とかなるものではございません。それとも、、爺やが相手になりましょうか?」
王宮の中、いつものような急な王子様の要望にも、爺やは眉一つ動かさない。
「うへえ、笑えない冗談はよしてくれよ。」
「ほほ、失礼いたしました。ところで、坊ちゃん、これまた急に、どうして恋をされようと?」
「これを見てくれ。」
そういうと王子様は、机に積み上げられた中から一冊の本を爺やに渡した。
「これは、、、少女漫画ですかな?」
「そう、姉上から借りたものだ。」
「なるほど、、この漫画のように坊ちゃんも恋をされたいと思ったのですな。」
「まあ、そんなところだ。なんせ、恋をすれば必ず幸せになれるというからな。」
キラキラと目を輝かせている王子様に対し、爺やがコホンと1つ咳ばらいをして、尋ねた。
「『必ず』ですか、、、えー、坊ちゃん、それはどなたからお聞きに?」
「姉上だが?ああ、それにしても楽しみだ。最近、何か物足りなさを感じてしょうがなくてな、、どんなに美味しいものを食べても、どんなに綺麗な宝石を手に入れても、心が満足しない。しかし、恋をすれば、きっとこの気持ちも晴れるはず、、そうだろう?」
「えー、坊ちゃん、、少々誤解がありますようで、、恋をすれば『必ず』幸せになれるとは限りません…。」
「なに?恋をしても幸せになれないのか?」
「そういうわけでもございません、、幸せになるお方もいらっしゃるということです。」
「んん?どういうことだ?」
頭の上に?マークを浮かべる王子様に向かって爺やが説明する。
「先ほど申しました通り、恋はお相手様との絆がとても大切です。ですので、『幸せ』をつかめるかは、坊ちゃん、そしてお相手様次第ということです。」
「なるほど、、まあ、そんなことなら大丈夫だろう。王子の僕だ、できないはずがない。で、じいや、なんとかしろ。」
「ふむ、坊ちゃんがそこまでいうのなら、、爺やも一肌脱がなくてはなりませんな。坊ちゃんの初めての恋、必ず成就させてみせましょう。」
爺やは、続けて言った。
「ときに、坊ちゃん、、明後日から小学校は春休みでしたかな?」
「そうだが、、なぜだ?」
「ほほ、そのお休みを使って、坊ちゃんに恋をして頂くのです。」
「むむ、明後日まで待たないといけないのか?」
「恋とは時間がかかるものなのですよ。」
「そうか、、、だが、できるだけ早くしてくれよ。僕は一刻も早く恋をしたいのだ。」
「かしこまりました。坊ちゃん、明後日からお見合いをしましょう。」
「お、お見合い?」
「ええ、国の貴族様や、隣国のお姫様にもお声かけしようと思います。」
「いや、そもそもお見合いってなんだ?何をすればいいんだ?」
「ただ好きにお話をすればいいのですよ、、もし気になる女性がいれば、後日お二人でどこかに行くお約束でもできれば完璧です。」
「ううむ、しかし、恋のためだ、やってやろうじゃないか。」
こうして、王子様のためのお見合い大作戦が始まった。
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