後期学期後期のルクリア

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ラナンは毎日私に言う言葉に「俺を捨てないで」も追加したみたいで。 なんだか本当に。ラナンのほうが多く私のことを好きなんじゃないかしらと勘違いしてしまいそうになっていた。 口止めしなかった私が悪いんだけど・・・。まさか、学校で言うとは思わないわよ!! ネモフィラ様とプラタナス様から喧嘩したの?と心配されてしまった。   ・ 「あぁ、そばにいたい。・・・行きたくない」 子爵家で私を馬車から降ろし、準備のためすぐに寮に戻る予定だったのに。 ラナンはまだぐずぐず言う。 だいたい、私はひとりで帰ると言ったのに。送ってくる時間も余計だったのよ?もう帰らなくちゃでしょ? 「行かない訳にはいかないわ。王妃様のお声がかりなんでしょう? ・・・気を付けていってらしてね」 ふふっとラナンは笑って。「あぁ早く毎日そう言われたい」 それ、前にも聞いたわ。 馬車を見送る。ラナンは後ろの窓からずっと手を振ってくれた。 彼は今日、王宮でのディナーに招待されている。 「格式ばった感じでは無いんだ。いつも、ただの食事会といった風で」 そういえば、よく王宮へ行くと言っていたわね?と聞くと。 王都へ来てから、少ない時でも月に一度は。殿下たちと過ごしていたと教えてくれた。 特にプラタナス様が長期休暇で戻ってきたときには、ほとんど毎日伺っていて。 ランチをご一緒する時もあれば、夕食の後泊まったりする事もあったらしい。 「本当に友人扱いをしてくださるんだよ」 だけど。 ラナンは。ここ数か月。わが家へ入りびたりで。まったく王宮を訪ねていなかったそうで。 「王妃様が、4人で夕食でも。とご連絡をくださった」 王妃様にも、よく声をかけていただいていたから・・・。カーディ様との最近の距離を・・・心配してくださったんだろうな。とラナンは呟いていた。 とうとう馬車が見えなくなって。・・・私は家へ入る。 ぼんやりと階段を上って。・・・いつもの癖で、ラナンの部屋のほうのドアへ手を伸ばしてしまって。 ちょうど廊下を曲がってきたノーラに笑われた。うっ。 「クスクス。お嬢様。旦那様がお呼びですわ。書斎までお願いします」 「どうして教えてくれなかったんだ」 書斎に居た父様は悲しげで。 お母様はにこにこしていた。 「?・・・何のことでしょうか」 注文から10日。 ドレスが出来上がったから、確認のために試着をお願いしたい。と連絡が来たそうで。 ラナンはキャンセルしなかったのね。・・・私が本気で言った訳じゃないって見抜かれていたんだわ。思い出して恥ずかしくなっていると。 お母様は何か勘違いして、にまりとされた。 問い合わせると。今日でも大丈夫ですとお店が言ってくれたので。 父様とお母様と試着に行くことになった。 ・・・馬車に乗るときに少しもめたけれど。いいわ、帰りは譲らないから。 ラナンが指示したとおりにドレスは出来上がっていて。 「ほう」「まぁ。素敵ね」とふたりは嬉しそうにドレスを眺める。 父様だけ部屋を出てもらって、試着。 お母様が私の着替えを手伝おうとなさるから、ちょっと困ったわ。 嬉しくもあったけど。 「ど、どうかしら?」着替え終えて、感想を聞くと。 お母様は涙を浮かべられた。 「とっても。とっても似合っているわ」 (菫様にも。しろさまにも。ゴデチアさまにも見せてさしあげたかった) アンナ母様の気持ちが嬉しい。 「他のお母様もみんな。私を見てくださってるわよね?」 手を伸ばすとしっかりと握り返してくださった。 「ええ、皆様。あなたの幸せを祈っていらっしゃるわ」 父様も部屋へ戻ってくるとすぐに、褒めてくださる。 「あぁ。綺麗だね、ルクリア。・・・やっぱりどこにも行ってほしくないね。 ずっと私の娘のままでいてほしいよ。 それでも、君の幸せのためには我慢しなくては。 いや、やっぱり他の方法が何かないかなぁ。契約書類をすべて燃やしてしまえばあるいは・・・」 「旦那様!」 「ああ。杏。名前を呼んでほしいとあれほど・・・」 「父様!今は止めてくださいませ!」 嫌だわ!慌ててまわりを見るけど。店主のおばあさんはにこにこしてるだけ。 そうよねぇ。父様の事も小さいころからご存じだもの。びっくりはなさらないわよねぇ。ぎゅっとお母様を抱きしめる父様を見ても全然平気でいらしたわ。 ドレスには、手直しするところはひとつもなくて。 翌日。子爵家へ届けてくださることになった。 「一緒にお嬢様のサイズのトルソーをお持ちいたしますわ。 ドレスをお部屋に飾ってたくさんの方に見せて差し上げてくださいね。 トルソーは一応貸し出しの体裁になりますが、よろしかったらそのままお持ちください。 もちろんお邪魔でしたら引き取りますが、結構使えますのよ」 帰りの馬車に乗り込むとき「私の順番よ!」と父様を押しのける。ふふ。 来るときにはお母様の隣を取られてしまったけど。今度は私がお母様の隣に座るんだから! 席取りに勝った私の頭をなでながら。 「今日の試着は、ラナン様に内緒に出来たけど。 明日のお届けは内緒に出来ないわ」 にやにやとなさるアンナ母様。そういうところ変わらない。 「午前中に持ってきてもらったら、気付かれないかもしれない」 視線を避けて言い訳するけど。 「あの最高級のレースの支払いは、辺境伯家へ行くのだもの。お届けの確認をしてもらわなくてはならないわ」 ・・・正論。 「で、でもね?すぐに結婚しようと仰るんだもの」 「なんだ、ルクリアは嫌なのか。やはり他の方法を。魔法学校を殲滅してしまえばいいんじゃ・・・」 お母様は父様を目線で黙らせて。 ・・・私を見ると。すっと眉を下げる。心配そうに。 「嫌なの?」 ・・・嘘はつけない。私は小さく首を横に振った。 嬉しそうにお母様はまた。頭をなでてくださる。 「寂しいと思うから複雑だけど、結婚を急いでもいいと思うわ。 皇太子殿下はだいぶお元気になったそうだけど・・・。 また寝込まれる前に殿下の御子を。と考えている方が多いそうなの。 皇国皇家には、ほとんど権力がないけど。それでも。 あなたのことがわかったら。 ラナン様との婚約を解消させるくらい、簡単なのよ」 私のいとこ。お元気になられて嬉しいわ。 ・・・もしものことがあったら。王妃様もアンナ母様も。2国の間で悩むことになってしまわれる・・・。
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