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「決して邪魔はしないからいいでしょ?
それに、もう魔法部に勤める気はないと言ったよね?
もしもってことがあったとしても問題はないよね?
学費を稼ぐ必要はなくなったものね?
子爵領の香水はすごい人気で。領地はかなり潤っていると知ってるよ?」
己惚れているかもしれないけど。絶対嫌だと言ってくれると思ったの。
だから、今日まで待って。午後のお茶の時間に話をし始めたんだけど。
はぁぁ。どうせなら、夕食の後にしてしまえばよかった。
ここまでラナンが面倒くさいとは考えてなかったわ!
「そういう問題じゃないのよ」
何度目だかもう忘れたけど、また言う。
「そういう問題だよ!
まだ学費が必要なんだったら、俺に出させて!俺の弟妹でもあるんだから!」
そんな訳にはいかないわ。
それに、学費のことは。今ここで話してる事とは関係ないったら!
・・・はぁぁぁぁぁぁぁ。いったい何度同じことを言ったら納得してくれるのかしら。
「だから。そういう問題じゃないったら。
私の矜持の問題よ!」
もう一度、きちんと伝えたのに。
・・・泣きそうなラナンは私の前に跪く。
「君は素晴らしい女性だし。集大成として、ここでよい成績を修めたいと思うことは当然だ。そして、きっと修めると信じてる。
5年間の首席を手に入れる。その覚悟も。・・・見惚れる。素敵だ」
・・・そんなに褒めてもらうと照れてしまうわ。だけどさっき、もしもいい成績が取れなくても問題ないって言ったことは忘れないわよ!
「だけどね。それを目指すことと、君の要求は別問題だよね?」
また。議論?言い合い?は。最初にもどってしまう。
「ソレハ別問題ジャナイワヨネェ」
・・・もう私の言葉は平たんで。
はっきり言ってあきれ返っていた。
ラナンは。なるべく家に頼りたくなくて、授業料の必要ない王立魔法学校を目指したんだと教えてくれた。
その時だけ、必死に勉強したんだよ。と笑っていたし。本当のところは言ってくれないけど・・・。
彼は、弟が後継ぎだと思っていたから。ずっと成績に手を抜いていたんだと思う。
それなのに。前期試験で。私のために爵位争いに名乗りを上げようと思って頑張ってくれたらしい。
おかげで私はドキドキする羽目になったけど。
負けるまであと5点だったのよね・・・って思い出すと闘志が漲ってくるわ。
「あなたにだって、必ず勝つんだから!」
ラナンは、急に言い出す私をにやっと見て。
「絶対に負けないよ」って言ってくれる。嬉しい。ここで、負けてあげる。みたいなことを言ったら、一生許さないわ!
・
夜も更けて、寮へ帰る彼を見送りに玄関まで行って。
コチがいる時には、指先にしか口付けてくれないけど。
しばらく話もできなくなるもの。最後に抱きしめてくれないかしら。
そう思ってつい。彼の手をぎゅっと握ってしまった。
・・・それは悪かったと思うわ。
だけど。
ラナンは、やっぱり明日も子爵家へ来たいと言い出した。
結婚式を伸ばすわよ!と脅してやっと一旦は納得してくれたのに。
はぁぁぁぁ。また最初から説得させる気なの?
私は厳しく言い放つ。
「だめよ!たった数日じゃないの!」
「いやだ!!」
私にしがみつくラナンは、同じ言葉を繰り返す。
3回目にとうとうコチに抱えあげられて、馬車に放り込まれた。
「シャガ、さっさと出せ。試験期間中、見張っていろよ」
イライラした低い声はでも。
馬車が出発すると笑い声に変わった。くっくくく。
わ、私のことも一緒に笑ってるでしょう!コチ!
そう思ったけど。
・・・やっぱり玄関から離れられなくて。
後ろの窓にぺたりと張り付いたラナンが見えなくなるまで。じっと馬車を見送ってしまった。
私だって寂しいわ。だけど・・・。
明日から後期の試験が始まる。
試験中は、校内での私語が禁止される。
私は。ラナンがわが家へ来るのも、朝からのお迎えも禁止した。
最後の試験なのよ。
きっと首席を通したいし、絶対に不正を疑われたくない。
ラナンにも迷惑をかけたくないの。
きちんとそうお願いしたのに。
ラナンは、家に来るくらいいいでしょ?と言ってきかなくて。
本当にぐずぐず言いつのってくれたわ・・・。
「100歩譲って別の馬車で来るから。会いに来ていいでしょ?」
「1歩も譲ってないわ!来てはだめだと言っているのよ!」
魔法部へ就職はしないつもりだけど、父様には負けたくない。
馬車や家でラナンと話していたら、気も緩んでしまうかもしれないし。
もしも不正を疑われて、試験結果を無しにされたら?
考えただけでぞっとするわ!
・・・そ、それに。
ラナンが爵位を継ぐのはずっと先の話で。それまで王都で仕事をするというのなら。
私も一緒に働くっていうのも、なくはないかなって。
以前、働いてもいいって言ってくれてたし。
・・・彼が言ったように・・・そのう。子どもができるまで働いてはだめかしら・・・。
結局私はまだ、完全に諦めきれないのかもしれないわ。働いてみるということを。
確かにもう学費の心配はしていない。
リナーラ同様、リムもきっと学費免除を目指してくれると思う。
それに。
子爵領で作られる香水が、王宮侍女たちのおかげで知れ渡って。
今、王都ですごく売れているの。
安眠効果のおかげでお年を召した方にも人気だし。
恋人同士で同じ香水が使えるといって。若い方にも人気なの。
これも、アンナ母様が侍女や騎士に渡してくれた成果だわ!
父様はそのお礼だと言って、母様のドレスをたくさん買っていたのよ。気持ちはわかるけど、母様からすごく怒られていらしたわ。ふふ。
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