巨人の庭

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「なるほど、次のダンジョンは巨人が相手かぁ」 程なくして、リリアさんとマリアさんの二人への説教を終えたルナはいつものようにテーブルについて焼きたてのパウンドケーキを切り分けながら≪ヘファイストス≫について報告を受けた内容を反芻する。 「ヘファイストスは巨人にまつわる逸話が多い神だからどこかのタイミングで出てくるとは思ったけど、まさかフィールドmobからの参戦とは思い切ったな」 「湧出率は絞られてそうって言ってたけど、それでも遭遇したら結構厄介だね。エリアボス級の敵とランダムエンカウントなんて考えたくないなぁ」 巨大な人型の敵というと、ターロスから始まりサウロン、イヴァン、アルゴスとこれまでの攻略でも何度か立ち合ったことがあるが、話に聞くに≪ヘファイストス≫の巨人はそれらより大きな体躯をしているとのこと。 俺とほぼ体格が変わらないシャインが言うには「あたしの背と膝の高さがほぼ同じくらい」とのことだったので十メートルには及ばずともそれに近いくらいの体高はありそうだ。 「見つける分には楽なので避けようと思えばなんとかなりそうではありますけど、戦闘になったときのことを考えると複数パーティーでの行動が望ましいでしょうね」 「ウチのパーティーが集団行動なんてできると思う?」 リリアさんの言葉に対してマリアさんが俺に流し目を向けながら呟き、数秒間の沈黙が場を支配する。 正直俺も無理だろうなぁという自覚はあるが、身内からの信頼に涙が滲んだ。 「問題児は何もライト君だけじゃないけど今はそれは置いといて、ウチはまあ単独でもどうにかできるとは思うけど、他のパーティー……特に構成(ビルド)が偏ってるところはこれまで通りとはいかないかもね」 パーティー単位のステータス構成(ビルド)が偏りがちなパーティーというと≪無敵の盾≫を真っ先に連想するが、純粋な素手喧嘩(ステゴロ)であれば筋力体力に特化した彼らはそう心配する必要はあるまい。 ルナが危惧しているのはどちらかというと軽装アタッカーの構成員を主軸とした≪剣闘士≫所属のパーティーだろう。 攻撃性と俊敏性に特化した彼らはその分防御を犠牲としているため、脆い。 回避が間に合っているうちはいいが、相手のパワー如何ではいいのを一発受けようものならそれが致命傷にすらなり得るのだ。
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