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プロローグ
ご飯が食べられなくなったことって、ある?
食欲がないから――とかじゃなくて、食べるものが何もなくて食べられないっていう究極のやつね。
あとは、自分の家の水道とか電気が止められたなんてことは?
ていうか、普通ないよね……。
その料金が払えないと止められるらしいっていうのは何となく知ってたけど、実際に「止められちゃったんだよね」なんてリアルな話を友達から聞いたことすらなかったし、自分にとっては他人事くらいの感覚だった。
そんなことあり得ないって思ってた。
けど私の場合、そんなの嘘でしょ?――みたいなことが起こってしまった。
食べるものもなくなって、水道も電気も止められちゃったっていう。
その時はもうホントに動揺したし、ヤバいの通り越しちゃってるなって思った。いざそうなると逆に何にも考えられなかった。頭の中が真っ白で、何だろう……なんか、こう『無』みたいな。
テレビのサバイバル系番組ならまだしも、別に無人島に来た訳じゃないからライフハックとか知らないし、スマホも使えないからそもそも調べられないし、とにかく早く元通りになってほしいっていう思いしかなかった。
スマホがないから助けてもらう方法がわからなかった。
あ、一瞬頭を過ったのは路上生活。
真面目にね。
お金のことはお母さんが当然管理してるからわからないし、まだ中学生だから生活保護っていうものがどういうものなのか全然知らなかったし、とにかく不安しかなかった。
悪いことしてる訳じゃないんだけど、誰かに相談なんてできなかった。
恥ずかしいっていうか、誰にも話しちゃいけないような気がしたから。
一番ツラかったのは、やっぱスマホ。
もう、これはマジでキツかった。
スマホが持てるって、めちゃくちゃ幸せなんだよ。ホントに……。
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