友達のなくし方

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 そんな感じで穏やかな生活が続いていたけれど、突然態度が変わった。  週明けで教室に足を一歩踏み入れた瞬間、冷たくて重い視線がこちらに向かって刺さってくるのがわかった。  言葉では上手く伝えられないけれど、それに反応した体がこわばって急に苦しくなったのは、今でも忘れられない。  真衣があからさまに私のことを睨んでいる顔をしていた。 ――え? 何?   私は心臓が急にドキドキするのを感じながら、誰とも目を合わせないよう反射的に下を向いてリュックを机の上に下ろした。 「東京に住んでました、っていう自慢」  真衣の声がした。ひとりごとのようだけど、私に聞こえるようにあえて大きな声で言ったのだろう。  すごくザワザワして寒気さえした。  その時点ですぐにわかった。 ――今から仲間外れにでもされるんだろうな。  その日の放課後、そんな空気を読んだ私は一人で帰ることにした。  まるで私なんかこのクラスに存在しないかのように、朝から必要以外のことで話し掛けられなくなっていたし、こっちから話し掛けるのが正直怖かったこともあって、ほぼ無言で一日を過ごした。  極端に会話がない日なんて初めてだったから、声が出なくなったんじゃないかと思って咳払いをして確認をしたほどだ。 「あ、ああ……」  ――良かった。声出る。  声が急に出ないとかそんなことあり得ないけど、本気で不安になったのだ。  ふと思い出した……。  小さかった頃、お母さんがパートで遅く帰って来る夜に、ずっと一人きりで不安で寂しくなってしまった時のこと。  会話しない時間が長いから自分が声を出せなくなったんじゃないだろうか?――なんて思ってしまって同じことをしたことがあった。 「あ、ああ、ああ……」  声が出て安心したと同時に、お母さんに会いたくて私は泣いた。
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