友達のなくし方

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   ついさっきもそうだった。  前の席の野波さんが国語のプリントを私に渡そうとしてくれた瞬間、床に落ちてしまって焦っていたのに、私は何も言わずに無表情のまま拾っているその姿をただ見ているだけだった。 ――ごめん……。  もしも、私が野波さんの立場だったら、『冷たい子だな』と絶対そう思うに違いない。今までの私なら、無意識に席を立って一緒にプリントを拾っていたと思う。  このクラスのことが嫌いだけど、そういう自分はもっと嫌いだ。 ――私、マジ最悪。  心でそう呟く。  だから恥ずかしくなって顔を上げられず、プリントを真剣に読んでいるフリをして下を向いていた。  ほんの少しの優しさまで失ってしまったのかと思うと、そんな自分にがっかりした。 ――私ってこんな意地悪じゃないよね?  自問自答する。  罪悪感を持ちながら、強がった態度でいることはとても苦しかった。 ――このまま透明人間になってしまいたい。  給食を食べているときは、まるで石コロが喉を通過していくみたいに固く感じるし、どんなに美味しいものでも味がしない。時々話し掛けてくれる子もいるけれど周りを気にしながら喋ってくるし、私と話しているところを見られるのが嫌なんだろうなと思ってしまう。  だから逆にこっちが気をつかう感じになっちゃって疲れるのがオチ。  きっと、こういう状況とか世の中は『イジメ』って簡単に呼んじゃったりするんだろうけど、私はイジメられてるなんて感じたことは少しもない。  これくらいのことで「イジメられてます」なんて言ったら、きっとクラスのみんなは「は? 何のこと?」ってなると思うし、「被害者ぶってる」ってなって、ますます、ぼっちに拍車を掛けるだけってことが予想できる。  私は至って普通のイマドキの女子だと思っているし、それにどう考えてもイジメにつながるような理由が見つからない。  誰かをイジメたっていうこともないし、ぼっち経験も生まれて初。勉強は普通、部活の成績はまあまあ。今どきの女子中学生レベルでオシャレして流行りのメイクだってそれなりに出来る。  だからって、なんで真衣に睨まれなくちゃいけないのかわからない。 「ふぅ……」  誰にも聞こえないくらいの小さなため息を、ひとつついた。
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