友達のなくし方

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   学校やクラスメイトの雰囲気、ぼんやりと授業中に教室の窓から眺める景色までも、すっかり変わってしまった。  住んでいたのは下町と呼ばれるところだったけれど、駅前は普通に栄えていて便利だったしスカイツリーだって見えたのに、この教室の窓からはまるで女の人が寝そべっているみたいな恰好をした山が遠くに見えるだけだった。  見渡す限りの山並みと青空は風景画のように美しくて、生まれて初めて自然がたくさんあるって素晴らしいと思ったのも確かなことだった。都会の人たちが田舎暮らしに憧れる理由ってこういう魅力があるからなのだろう。  こうして私が窓の外をずっと眺めていられるのは、左隣の席の子がずっと来ないからだ。保健室登校しているらしくて一度も顔を見たことがない。  みんなも先生も左側の子の話題に一切触れない。不思議。  もしかしたらその子は転校してきた私のことすら知らないのかもしれない。  知ったところで何かが解決するわけでもないだろうし、今の私にとって、この風景を静かに眺められるのが一番の幸せかもしれないから、左の席がこのまま不在でもかまわない。  窓から入ってくる風も最高に心地がいい。  空気がきれいっていう証拠なんだと感じていた。
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