力のルーツ

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男は何も動じることはなく、レーザー銃は男の心臓を貫き、背後のドアを貫通するバンッという音が響いた。 …やったか。 貫いた部分から出血し、衣服をみるみるうちに赤く染めていくが、男は様子が変わることはなく、衣服が赤く染まっていくのを不思議そうに見ていた。 「な、何なんだ、お前。」 「…今、俺を攻撃したのか?」 「…こいつ、頭がおかしいのか。」 次の瞬間、男は左腕を勢いよく振り下ろし、突き刺さっていた親父さんを俺に向かって投げ飛ばしてきた。俺は親父さんを咄嗟に受け止めようとしたが大人の男性を受け止められるわけもなく、そのまま後ろに倒れて意識のない親父さんの下敷きになってしまった。 「くそっ!」 「涼一くん!」 物凄い音に奥にいた花畑さんが飛び出してきて、あまりにも衝撃的な光景に一瞬固まるも、すぐに敵の襲来だと理解し、親父さんを俺の上から動かそうと親父さんの腕を強く引っ張った。 「涼一くん、大丈夫!?」 「俺は大丈夫です。…ありがとうございます、もう出られます!花畑さんは奥で親父さんの手当てをお願いします!」 「分かったわ。」 花畑さんは、少し奥まで親父さんを引っ張ると変身した。 俺はゆっくり立ち上がり、再び玄関に視線を向けた。男はずっと立ったまま、こちらを見ていた。 「…何だよ、攻撃してこないのか!?」 「…攻撃?邪魔だから排除しただけだ。腕が軽くなった。この赤いのは何か気持ちが悪いな。」 …脳みそが弱そうだが、力は尋常じゃなさそうだな。てか、テネブル軍の襲来があれば花畑さんとかは知らせが来て気が付くはずじゃなかったのか。 「…この赤いのはお前のせいか。」 男は俺を睨み付けた。その恐ろしい圧に俺は全身に一気に汗をかき、再び攻撃の体勢をとった。 「…だとしたら?」 「お前も邪魔だ。」 男は表情を変えることなく、俺に向かってきた。巨体ゆえに俊敏さはないが、攻撃を一度でもくらえば親父さんの二の舞いになることが予想できた。 「くらえ!」 俺は光弾を限界の六発まで全てを男の顔面に命中させた。顔に六つの穴が空いた男だが、表情一つ変えることなく、腕を振り上げた。 「嘘だろ!」 バーンッ!! 俺は振り下ろされた腕をかろうじて躱した。俺の代わりに攻撃を受けた廊下の床は砕け大きな穴が空いていた。 「馬鹿力め。」 「…当たらなかった。」 「お前、テネブル軍か?」 「…テネブル。テネブルは…敵だ。」 …敵?てことはこいつはテネブル軍の一味じゃないってことか?なんだかよくわからんが、こんな奴が地球人なわけがないよな。つまり…宇宙大戦争なのか? 「どこにいる?」 「…誰のことだ?」 「力を持つ女だ。名前は…確かアンジェ、違うか、アンジョ…か。」 …こいつもアンジュを探してる!?一体どんだけ狙われてんだよ、あの子は。 「…ここにガーディアンが集まってる。ガーディアンがいるところに力を持つ女がいる。」 「…お前、ガーディアンの見分けがつくのか?何者だ?」 「俺のことを知りたいのか?俺は…」 「うおおおおおおおおおっ!!」 ドンッ!! 「いってぇぇ!!」 「虎紋!!」 突如現れ、男に背後から飛び蹴りを食らわせた虎紋だが、男はビクともせず、逆にダメージを食らった虎紋が地面に倒れた。 「…またガーディアンが来たのか。」 「虎紋!こっちに!」 既に変身していた虎紋は、素早く立ち上がると目にも止まらぬ速さで男の脇を通り過ぎ、俺の横に現れた。 「涼一、一体これは…。」 「正体が分からねぇ奴が急に来た。親父さんがやられて、今奥で花畑さんが治療してる。」 「親父が!?」 虎紋は直ぐに奥に移動し、親父さんの様子を見に行った。その間も俺は男を視界から逃すことなく、どうするべきかを考えた。 …攻撃が全くきかねぇ。何か奴に弱点はねぇのか。痛みを全く感じない奴に対する戦い方、一体どうすれば…。 「涼一くん!」 奥から花畑さんに呼ばれ、俺は男を見ながら後退した。 「どうしたんですか?」 「あの男の正体分かったの?」 「いえ、まだです。でも、テネブル軍のことを敵だと言っています。」 「敵?テネブルが?…一枚岩じゃないのかしら。」 「花畑さん?」 気が付くと花畑さんは俺の真横にいた。 「あの男、テネブル軍のことを敵って言ったの?」 「え、えぇ。でも、あの男が来たのに、みんなには知らせが来てないんですよね?なら、奴はテネブルじゃないのでは。」 「元…かもしれない。」 「…元?」 「何かを理由にテネブル軍を離れたのよ。反逆者ってわけ。」 「おい、何をごちゃごちゃ言ってるんだ。」 ずっと突っ立っていた男もついにしびれを切らしたのか、苛ついた口調に聞こえた。 「女だな。お前、アンジョ…あれ、アンジェか?」 「…違うわ。」 「そうか。よく見たらお前もガーディアンか。なら、死んでもらう。…ふんっ!!」 男が力んだ瞬間、ただでさえ筋肉ムキムキの身体が更に膨張し、腕は普通の人間の胴囲に久しく見えるほどだった。 「…化け物め。」
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