力のルーツ

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「さっさと殺っちまおうぜ!」 「えぇ、誤算といえど、大したことはない。」 人頭がニヤリと笑った。 …さっきから話すのは人頭と牛頭ばかりで、左の羊頭は何かをブツブツ言ってるだけで、視点もこちらを見ていないな。 「ふんっ、階級は俺の方が下だが、パワーのそれとは違う。」 フォラスはバラムに向かって一直線に飛び、体当たりをしようとしたが、バラムは真下に避けた。 「…馬鹿な戦い方ですね。私は肉弾戦は好みません。」 「馬鹿かどうかは勝ってから言えや!俺は前からお前のその話し方が気色悪くてな。」 フォラスは再び真下のバラムに向かって一瞬で移動し、その太い腕を振り下ろした。今度は避けれなかったのか、ドンッという音とともにバラムはそのまま真下に急降下をした。すると、フォラスは再び一瞬で急降下するバラムを追い越すと、今度は太い足を蹴り上げてバラムを真上に飛ばした。 「俺たちも参戦するぞ!」 久利は急上昇してくるバラムに向かって移動し、剣を振り上げた。 俺も離れた場所から、レーザー銃を放ち応戦をした。 「うおおおっ!!」 久利がタイミングを見て剣を振り下ろした瞬間、バラムの姿が消え、久利は空中で体勢を崩した。 「どこに行った?…!?」 俺は何が何だかわからずバラムが居た場所を見つめて呆然としていると、突然、背中に激痛が走った。 「涼一!!」 久利は俺の方を見ながら慌てた表情で、こちらに駆け寄って来た。 …あれ、何か目が重い?さっきまでの痛みが徐々に和らいでる? 「涼一!!目を瞑るな!!」 薄れゆく視界の中、久利が鬼のような形相で俺に向かって剣を振り上げながら向かってきていた。 …何だよ、俺を殺す気か? 久利は俺を飛び越えて剣を振り下ろした。振り返ると、その攻撃を躱したバラムがニヤリと笑っていた。 …バラムが背後にいたのか。 ふと、視線を自分の身体に向けると服が真っ赤に染まっていることに気が付き、そこで俺は意識を失った。 「…星野殿。…おい、星野殿!」 …この声はプット? 俺はその声に反応するように、ゆっくりと目を開けた。どうやら、どこかで横になっているようで、視界には透き通るような青空だけが映っていた。 「星野殿。」 右側からやはりプットの声がし、俺がゆっくり首だけを右に向けると、初めて見る人物がいた。 そこにはあご髭を蓄えた背の低い初老の男性がいた。 「星野殿、お目覚めかな?」 「…プットさん?」 声は間違いなくプットだが、いつもの柴犬ではない。そして、横を向いて気付いたのだが、一体ここはどこなんだろうか。真横にも空のそうな空間が広がって見える。 「星野殿、お主は今死にかけておる。」 「…ここは?」 俺は上半身を起こした。 「…っ!?」 地面に視線を向けると地はなく、周りと同じ様に空のような空間が下にも続いていた。 …つまり、俺は宙に浮いてるのか? でも、格好はガーディアンではなく普通の私服。浮力があるような感覚もない。 「ここはヴェール星じゃ。」 「ヴェール星…それってプットさんやアンジュの星?」 「うむ。吾輩のワープ能力を使ってお主を連れてきたのじゃ。ここは、ヴェール星の中でも神聖な場所でな、鍛錬の泉と呼ばれる場所じゃ。」 「…どういうことですか?」 「星野殿、お主はガーディアンの力の使い方がまるでなってない。修業が必要じゃ。」 「…展開が早すぎてついて行けないんですけど。修業って一体何を。」 俺の問い掛けに、プットは不敵な笑みを浮かべると、さっきまで何も持っていなかったはずのプットの手には薙刀のような武器が握られていた。 「相手は吾輩じゃ。」 「…身体と武器のサイズおかしいですよ。」 その瞬間、目の前にいたはずのプットが消えた。そして、右頬に痛みを感じて手を当てると真っ赤な血が付いていた。 「今のはほんの挨拶じゃ。」 背後から声がして振り向くと、血が付いた薙刀を持つプットが立っていた。 「…今のを一瞬で?」 「次は手加減せんぞ。本気で来るんじゃ。」 プットからは殺気が溢れているのを感じ、俺は身体を震わせていた。 ー 地球 ー 「フォラス!後ろだ!」 「くそっ、ちょこまかと。」 振り向きざまに放ったフォラスの一撃を簡単に躱したバラム。 「全く力だけあっても戦いには勝てませんよ。それがあなたが私より階級が下の理由です。」 「おい、さっさと殺っちまおうぜ!」 牛頭がイライラしながらフォラスを睨み付けた。 「お前の頭と身体はどうなってんだ?そんなに性格が違う頭が三つもあってよ。」 「…戦いながら教えましょうか。」 バラムは何かをブツブツと唱えた。 「っ!?な、何だ!?」 突然、フォラスの身体が硬直し、微動だに出来なくなった。 「ほら、物理的な力など意味がないでしょ。」 「随分と卑怯な手を使うじゃねぇか。」 「卑怯とは言葉が悪い。効率的かつ崇高な戦い方と言っていただきたい。」 「後ろがガラ空きだぜ!!」 カキンッ!!久利が背後から振り下ろした刃は、牛頭の角で受け止められた。すると、牛頭だけが首を180度回転させ、久利を睨み付けた。 「お前に俺たちが殺せるとでも思ってんのか?」 「…ふん、やっぱ気色悪ぃ奴だな。」
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