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「おい！まずはこのガーディアンから殺っちまおうぜ！」
「そうですね、フォラスは動けませんし、後でじっくり斬り刻んであげましょう。」
「うおおおおおおっ！！」
久利は連続でバラムに斬り掛かったが、バラムは体勢を崩すことなく華麗に躱し続けた。
「フォラスよりスピードはありますが、あなたには技術がない。ほれ！」
バラムが掌を久利に向けるとバラムの手から突風が吹き付け、久利は為す術なく後ろに飛ばされた。
「…くっ。…ッ！？」
久利が飛ばされた背後に気配を感じて振り返るとバラムが先回りをしていた。飛ばされた勢いを止めることができない久利はそのまま体勢を変えてバラムに斬り掛かった。
カキン！牛頭の角で久利の剣を受け止めると、バラムは久利に掌を翳し、何かを呟いて身体を硬直状態にした。
「くそ、俺も動かねぇ！」
「フフフ、力なんてものは無力なんですよ。このまま苦痛を味わいなさい。」
バラムはそう言うと、翳した掌を捩じるようにゆっくり動かした。
「ぐ、ぐわあああっ！」
バラムの掌の動きに合わせて、久利の身体が捩じれ始め、久利はその耐え難い苦痛に悲鳴を上げた。骨が無理な力に悲鳴を上げてキシキシと嫌な音を上げている。
「フフフ、いい音ですねぇ。私はこの骨が軋む音をバックに苦痛の悲鳴を聞くのが大好きなんですよ。」
「くっ…ふん、趣味が悪いな。ほんとに気色悪い奴だ。」
「…また言いましたね。」
バラムの表情が変わった。さっきまでどちらかといえばニヤニヤと笑っていた表情が無表情に近いものに変わったのだ。
「おっ、ついにキレたか！」
牛頭が嬉しそうに言った。
「残念ですが、あなたにはここまま捩じ切れていただきましょう。」
バラムは掌をゆっくりと捩じり始めた。
「っ！？ぐわああああ！」
「いいですねぇ、もっと聞かせてください。その命が尽きるまでね。」
その時だった。久利とバラムの間にどこからか煙幕が現れた。
「…なんですか、これは。」
久利の姿が全く見えなくなったバラムは、再びニヤリと笑った。
「こんな子ども騙し、私の力の前では全くの無意味です。…死になさい！」
バラムは煙幕の中、一気に掌を捩じった。
「ぐわああああ！！」
大きな久利の断末魔が煙幕の中に響いた。
「フフフ…ハハハハハハハ！最高ですねぇ！ハハハハハハハ！」
「ふん、俺より性格悪ぃじゃねぇか。」
牛頭が高笑いをしている人頭を冷ややかな目で見た。
「…剣士。」
フォラスが煙幕を見つめながら呟いた。
煙幕が徐々に晴れるとバラムの視線の先には久利が姿を現した。
無惨な姿だった。上半身と下半身が腹部を基準に逆方向に捩じれ、あらゆる骨が肉を突き破り、その身体はかろうじて腹部で繋がっているのかどうかという姿。内臓か潰れたのか顔中から血を噴き出していた。
「素晴らしいオブジェだ！是非、持ち帰って私の部屋に飾りましょう。」
「ふん、気色悪いってのはこういうことを言うんだよな。」
牛頭は、無惨な久利の姿を見つめながら呟いた。
「…さて、次はフォラスの番ですね。」
バラムはフォラスを見下ろした。
「…くそぉ！身体が動かない。」
バラムは一瞬でフォラスの目の前に移動すると、フォラスの顎を掴み、自分に近付けた。
「かつての仲間を殺すのは忍びないですなぁ。」
「ふん、顔は喜んでるじゃねぇか。」
牛頭が呆れた表情で言った。
「どのように殺しましょうか。さっきのガーディアンのようにグロいオブジェにするか、丸焦げの肉塊にするか、切り刻んで粉々にして空から撒くか、それとも…」
「ペッ!」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべるバラムに、フォラスは今できる最大限の抵抗として、唾を吐きかけた。
「…何をしてるんですか。」
「気色悪ぃ面を洗ってやったんだよ。」
「随分と死に急ぐのですね。」
バラムは冷静を装いながら顔を拭い、そのまま掌をフォラスの目の前に翳した。
「…俺も捩じり殺す気か？」
「まさか、そんな。…もっと苦痛を与えてからにしますよ。」
バラムはフォラスをキッと睨むと、掌から光線を発射させ、バラムの右耳を一瞬で焼失させた。
「ぐおおおおっ！く、くそ。」
「いいですねぇ、その顔。次は反対の耳です。安心してください。外側の耳は飾りと一緒、無くなっても声は聞こえるで…っ！？」
バラムは、胸に激痛を覚え、視線をゆっくり下ろすと、胸から刃が突き出ていた。
「…な、なんですか、これ。…ぐふぁっ。」
バラムは吐血をしながら、背後に首だけ振り向くと鋭い視線を送る久利が立っていた。
「な、なんであなたが。さっき殺したはずじゃ。」
久利は何も答えずに突き刺したままだった刃を一気に引き抜いた。
「ぐふぉっ！」
バラムは再び吐血をしながらさっきまで久利の遺体があった場所を見上げた。すると、確かに無惨な遺体と化した久利はそこにいた。
「何で俺が二人いるか、気になるよな。」
久利の言葉に再び目の前の久利に視線を合わせたバラム。
「……………。」
「残念だが、上の俺は偽物だ。」
バラムが再び見上げると、さっきまで久利の遺体があったはずが、ボロボロになった藁人形に姿を変えていた。
「…変わり身。」
「そうだ、忍者お得意の技だ！」
バラムは背後からした声に振り向いた。そこには、怒りで身体を震わせている虎紋がいた。
「親父の仇、取らせてもらうからな。」
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