やっぱり「あれ」が必要でした

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「な、なに言ってんだよ。俺が人魚姫ってガラじゃねぇよ」  平常心を保つフリをして、内心ビビっている。  バレてる?いつからバレてる?誤魔化せられるか?  尾ひれは、フレアのスカートが広がって、上からは見えていないはずだ。 「怒るなよ。…海から来て海に帰っていったから、人魚姫みたいだなって思っただけだから。ほら、上がって来いよ」竜樹が手を伸ばす。 「人魚姫だから、陸に上がれない」  怒ったふりをして顔を背けたが、実はマジだ。  …試すか?「あれ」を。  ちょっと心臓がドキドキしてきた。  いや、これは緊張とかじゃなくて、本当に人間になれるのか、その期待にドキドキしているわけで…。  あれこれ一人で考えているうちに、竜樹が梯子を伝って海に降りてきた。  そして、俺の腕を掴んで自分に引き寄せた。  あ、今だ。  人間にならなかった場合速攻で逃げようと決め、俺は竜樹にすかさずキスをした。  竜樹は驚いて一度離れたが、俺の真っ赤であろう顔を見て、今度は竜樹からキスをしてきた。  そして、ぎゅっと抱きしめ「会いたかった」と俺に囁いた。  なんか勘違いさせてしまったかも…まぁ、いいか。  またあの足の痛みが襲ってきたが、前回ほどではなかった。  足を水中でパタパタ動かしてみる。  やった、成功だ。  …いや、これ竜樹に会うたびに海の中でキスをする必要があるのか!  なんて説明したらいいんだ???  竜樹はひょいと俺を片手にかかえ、突堤に上がった。
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